枕が合ってないと思うのですが・・・

といった質問をよく受けます。確かに自分に合った枕を見つけるのは難しいです。何個も何個も枕を買い替えながら悩んでおられる方が多いようです。そこで、カイロプラクターという立場からどのような枕が理想的なのか、考察してみたいと思います。

解剖学的観点からの枕の考察

まずは下の背骨のイラストをご覧下さい。

NormalSpine

このように、背骨は横から見ると首の部分で前湾し、背中で後湾し、また腰の部分で前湾するという”S字”のカーブを描いているのが正常です。また、立っているとき、座っているとき、寝ているときもこの緩やかなカーブが保たれている状態が背骨にとって一番負担の少ない状態です。それでは、首の前湾に注目して下の図をご覧下さい。

spine_supine-01

黒い線はベッドもしくは布団を表します。(低反発のベッドについては、後述しますが、必ずしもこの図には当てはまりません。)正常な背骨の緩やかなカーブを保ったまま横たわると首の下にスペースができます。背骨の形に注目すると、枕の高さは頭よりも首の方が高くなっている方がよさそうだなぁと思いませんか?実際に首の部分が頭より高くなっている既製品の枕は多数販売されています。このように、枕のサポートは頭の下ではなく、首の下により必要である事が分かります。

個人差からの考察

骨格には個人差があります。全員が全員理想的な骨格をもっている訳ではありません。よって、立った時に首が前に出ている人、肩の真上にある人、少しアゴが上がった状態の人など様々です。これこそが枕の選択を複雑にしている原因となっています。万人に合う枕は存在しないというのが私の意見です。私自身、実際に自分に合う枕選びには大変苦労しました。最終的に行き着いたのはウォーター枕といって枕の下の袋に水を入れて高さと固さを調節するというものでした。しかしながらこの枕があなたにぴったりであるとは言えません・・・。というわけで、どのような枕がいいのか?という視点から、どのような枕ならば理想的な頭の位置が作り出せるのか?という視点に切り替えたいと思います。下の図を見て下さい。

spine_chinhight-01

一人では少し難しいのですが、実際に枕に頭を乗せてみた状態を横から見て下さい。この時、アゴとひたいの高さが平行になっている状態が理想的です。ですからどのような枕であっても、アゴとひたいの高さに注目して見て下さい。首の部分が高くなっている枕であっても、横から見てみるとアゴとひたいの高さが全然違ったりします。極端に言えば、数万円する枕よりも千円の枕の方がこの状態を作り出せるとすれば、千円の枕を選んだ方があなたの体に合っているといえるのです。

体の歪みからの考察(そもそも枕が問題ではない場合)

骨格が歪んでいたり、筋肉が過度に緊張している場合は寝具がどうであれ寝付きが悪かったり疲れが十分にとれないということがあり得ます。どんな枕に変えても体に合わないと悩んでいる方は一度体の状態をチェックすることをおすすめします。カイロプラクティックのケアによって体のバランスが整い、自律神経のバランスが整い、筋肉の過緊張から解放されてよく眠れるようになるというケースは数えきれません。同じ枕でも体が整った状態とそうでない状態では全く別のものに感じるかも知れません。

※低反発のベッドについて

低反発のベッドを使用されている方は、そもそもベッドや枕が体の形に合わせて変形するので、普通の寝具を使っている場合に比べて枕の高さは低めが理想的である場合が殆どです。横から見た時のアゴとひたいの高さに注目して、適度な高さの枕を選ぶようにされるとより体への負担が少なくなるはずです。