人間が直立して2本の足で歩くようになってから少なく見積もっても200万年経ちました。二足歩行ができるようになって両手が使えるようになってから器用になり、脳も大きくなりました。背骨も重力に対抗する為にCの形からSの形に変化しました。

posture

200万年の歴史の中で、イスに座って本を読んだりPCの前で仕事をしたりしはじめたのはごくごく最近のことです。人の体はそもそも動物を追いかけたり畑を耕したりするようにできているのです。だからこそ”座る”という行為は人間にとってはあまり自然ではありません。ですから長時間座っていると様々な弊害があります。肥満、メタボリックシンドローム、高血圧、高血糖、高コレステロールなどがそうです。最近の研究では長時間座っていると大腸がんと子宮内膜がんのリスクが高くなることも分かっています。

長時間座る必要がある場合は、タイマーなどをかけて1,2時間ごとに立ち上がって歩き回るようにするだけで腰への負担を減らす事ができます。また、動き回る事で血液の循環を促して様々な病気の予防をすることができます。

ずぅっと座っていることの弊害はまだあります。骨と筋肉への影響です。人間の体は冷徹なまでに合理的に出来ているため、使わないところ=必要ないところと判断します。筋肉は使わなければどんどん縮小していきます。骨折したあとにギプスを巻いた事のある方は分かると思いますが、ギプスを巻いた部分は筋肉が衰えます。骨も例外ではありません。骨は刺激を受けると強くなり、刺激が無くなると弱くなります。人類が初めて宇宙に行って帰ってきた時、宇宙飛行士が地上に降りたった後に立ち上がることができなくなった事に驚きました。地球上で暮らしている限りは骨や筋肉は重力という刺激を受け続けています。久しぶりに地球に帰ってきた宇宙飛行士の筋肉は弱り、骨密度は著しく低下していました。よって、現在では宇宙飛行士は無重力下でもエクササイズを行って筋肉と骨の弱体化を防いでいます。

歩き回っていたり物を持って移動したりしている時と比べると、座っている時の骨や筋肉への刺激は非常に軽くなります。座っている時間が長い程、骨や筋肉への刺激が少なく、結果的に弱くなってしまいます。日常的に座る時間の長い人にはまずウォーキングのような軽い運動から始めてみると良いでしょう。

とにかく、座り過ぎには注意しましょう!

 

参考文献
Daniela Schmid, Ph.D., epidemiologist, department of epidemiology and preventive medicine, University of Regensburg, Regensburg, Germany; Graham Colditz, M.D., DrPH, associate director, prevention and control, Siteman Cancer Center, Washington University, St. Louis, Mo.; June 16, 2014, Journal of the National Cancer Institute