体のどこかに不調があってそれを治そうとする時、大きく分けて二つの考え方があります。それがインサイド・アウトアウトサイド・インです。風邪をひいたときを例に挙げてみます。

風邪の症状としては、体温が上昇する、鼻水が出る、咳が出る、頭が痛い、悪寒がするなどが挙げられます。インサイド・アウトの対処法は、暖かくする、水分を沢山とる、ビタミンCなどを筆頭にした栄養素のある食品を食べる、とにかく時間の許す限り眠る、などの行為を指します。つまり、体の内側から治そうとすることです。これに対し、アウトサイド・インの考え方は、風邪薬を飲む、点滴を打つなど体の外から中へ働きかける行為を指します。

風邪は放っておいても治ります。体には免疫という防衛システムが備わっているからです。体温が上昇するのは、白血球の活動を活発にさせるためです。鼻水や咳は鼻や喉からバクテリアなどを体外に出す為です。悪寒がするのは、体が体温を上げる為に筋肉を小刻みに震えさせているからです。これらの症状はすべて体が風邪と闘う為にあえてそうしている状態です。

薬を飲めば症状はおさまります。でも風邪を治すのはあくまで人体に備わった免疫です。ですから風邪薬で風邪が治ることはありません。風邪の症状を一時的に止めているだけです。仕事などの理由でどうしても休めない状況でなければ、風邪薬を飲むという行為は体が風邪を撃退するためにやっている事を全て台無しにしてしまいます。

腰痛においても同じ事が言えます。

あなたが腰痛に悩んでいるとします。まず多くの人が手を出すのが痛み止めや筋弛緩剤です。これはアウトサイド・インです。どうしても出席しなければならない会議があったり、痛みを我慢してでも休む事の出来ない事情がある場合に一時的に痛み止めに頼ることは仕方がありませんが、ずうっと痛み止めを飲み続けてはいけません。痛みとはそもそも体が「ここをなんとかしてくれー」と言っているサインなので、痛みを無視して活動していると、体はさらに痛みを強めます。また、副作用がありますので、腰痛がおさまったけど今度は胃腸の調子がおかしい・・・というように問題が増えていく恐れもあります。痛み止めでは腰痛は治りません。体が自分で治している間、腰痛の痛みを感じなくしているだけです。なぜ腰痛になったのか、予防するにはどうすればいいのか、そこを突き詰めて対応しなければ長期的な改善を得る事はできません。

腰痛に対するインサイド・アウトの対応とは、日常生活の改変です。バランスの良い食事により体内の炎症を抑え、適度な運動により部分的に凝り固まった筋肉をほぐし、十分な睡眠をとることなどです。カイロプラクティックのケアも体が自分で治すための環境を整えるという意味でインサイド・アウトのアプローチです。

がん、メタボリックシンドローム、肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧、動脈硬化、虚血性心疾患、脳血管疾患、痛風、肝臓病、アレルギー、骨粗しょう症、歯周病などの病気はかつて加齢こそが原因の大部分を占めていると考えられていました。しかし、成人病は若い頃からの運動、食事、喫煙、飲酒、睡眠、そしてストレスなどの”習慣”を重ねた結果起こるとされ、平成8年に”生活習慣病”と名称が変更されました。

私はなぜそこに肩こりや腰痛が入っていないのか大いに疑問です。肩こりや腰痛こそ生活習慣がそのまま反映されるものであり、その数は他の病気に比べて圧倒的に多いのではないかと思います。生活習慣を見直し、体の中から改善し、予防する。これがインサイド・アウトの考え方で、今後最も重要視されるべき事だと私は考えます。

参考文献
「薬をやめる」と病気は治る―免疫力を上げる一番の近道は薬からの離脱だった 安保 徹 著