平成22年国民生活基礎調査によると、人口1,000人あたりの便秘を訴えている人の数は、男性で24.7人、女性で50.6人となっています。これを日本の人口に換算すると男女合わせて957万人が便秘に悩んでいることになります。便秘に悩んでいても報告していない人も相当数いると予測出来ます。よって、国民の10人に1人は便秘といっても過言ではないでしょう。

厚生労働省のホームページe-ヘルスネットでは便秘の人がどのようなことに気をつけるべきか、詳しいアドバイスが掲載されています。便秘には様々な原因があり、その原因によって適切な対処法があるようです。どのような便秘薬にも副作用があり、さらに依存性もあります。できる限り薬に頼らない解消法を選択すべきでしょう。

今日のトピックはカイロプラクティックケアが便秘の解消促進にどのような関係があるのかご紹介したいと思います。

2001年にカナダのカイロプラクティックの学会誌
the Journal of the Canadian Chiropractic Associationに掲載されたレポートには週に1回のカイロプラクティックケアにより腰痛の緩和と慢性的な便秘の解消に効果があったとしています。また、2007年にアメリカの学会誌 the Journal of Manipulative and Physiological Therapeutics には手技療法による仙骨の調整と腹部のマッサージの併用が便秘解消に大きな効果があったと報告されています。

カイロプラクティックの施術が正常な腸の動きを促進するしくみについてははっきりとは分かっていませんが、神経学的に2つの要因が考えられます。

1つはカイロプラクティックケアによる自律神経の正常化です。自律神経は交感神経と副交感神経に分けられ、消化を進め腸の動きを促進させるのは副交感神経が亢進している時です。前述のアメリカのJMPTでのレポートによると仙骨の施術が便秘解消に効果があったとされていますが、副交感神経につながる神経はまさに仙骨の部位(仙骨神経 2,3,4番)から出ています。よって仙骨への施術が効果的であったと思われます。

もう1つは迷走神経(特に内蔵の運動)への刺激によるものです。迷走神経とは脳神経のひとつで、首からはじまり、横行結腸の3分の1までのほとんど全ての内蔵に到達している非常に重要な神経です。頭蓋骨と頸椎のつなぎ目の骨を環椎といいますが、この骨の位置(この部位を上部頸椎といいます)に異常があるとその周辺の神経系に影響が出る事があります。迷走神経の始まりは上部頸椎に近い場所に位置しているため、カイロプラクティックの施術により迷走神経の機能がより正常化し、その結果腸の動きが亢進されるのではないかと考えられます。

便秘で悩んでいる人は非常に多く、またその対処法が多いことから逆に混乱してしまうことがあるのではないでしょうか。食事と運動と水分とストレス、これらを見直してもまだ結果が出ないと悩んでおられる方は、自然で副作用のないカイロプラクティックケアをぜひ試して頂きたいと思います。

 

参考文献
平成22年国民生活基礎調査の概況
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa10/toukei.html

e-ヘルスネット 便秘と食事
http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-010.html

Redly M. The effects of Chiropractic care on a patient with chronic constipation. Journal of the Canadian Chiropractic Association. 2001. Sep; 45(3): 185-191

Quist DM, Duray SM, Resolution of symptoms of chronic constipation in an 8-year-old male after chiropractic treatment. Journal of Manipulative and Physiological Therapeutics. 2007. Jan; 30(1): 65-68