小学生くらいの時に友達や近所のお兄ちゃんやケンシロウ(TV)が指をポキポキ鳴らすのがかっこ良くて真似していました。指の音だけに限らず、カイロプラクティックのアジャストメントを受けた時にも音が鳴る事があります。この音は一体どこから来るのか、気になりませんか?
ポキッの仕組み
実は、この音に関して信頼のおける研究はまだ少ない為、まだ説の域を出ませんが、現在最も有力な説をご紹介します。指の関節を例に挙げてみます。関節は骨と骨、関節面を構成する軟骨、そして関節面を被う関節包で構成されます。関節包の中には滑液という液体が入っており、関節面同士の摩擦を減らす潤滑油の役目や関節への栄養を与える役目をしています。この滑液の中には酸素、窒素、二酸化炭素のガスが溶け込んでいます。最も音の出やすい関節は指の関節です。指を曲げると滑液包が伸ばされます。滑液包が伸ばされると包内の体積が大きくなります。体積が大きくなると圧力が下がります。圧力が下がると滑液内に溶けている各種ガスの飽和量が下がり(溶けることのできる最大の量が減る)滑液の外に泡として出てきます。急激な関節の動きによって関節包の体積が急激に変わるとガスも一気に放出され、その時に出る音があの”ポキッ”です。*1,*2,*3
関節包の体積が元に戻ると、ガスはまた滑液の中に溶けていきます。これにかかる時間がおおよそ30分。その間はどれだけ関節を伸ばしても音は出ません。
一つの関節包に溶け込む事の出来るガスの量は非常に限られているために、この少量のガスがどうしてあのように大きな音を出すのかはまだ解明されていません。
指をポキポキ鳴らすと関節を痛める?
JMPTという研究誌で、300人の指ポキ愛好家を集めて統計をとった報告があります。指を鳴らす事と関節炎とのはっきりとした関連性は見つかりませんでしが、軟部組織(筋肉、靭帯、腱等)への影響や握力の低下の兆候がみられました。これらは指を鳴らす際に関節の周りの靭帯も繰り返し伸した結果起こったのではないかとされています。*2
また、関節を鳴らした直後には関節の動きが良くなります。腱の中に入っている特殊なセンサーが急激に伸ばされると、腱の付いている関節の周りの筋肉を弛緩させる働きがあるからです。ポキッと鳴らした後に筋肉のコリが楽になった様に感じるのはこの為です。
カイロプラクティックとポキッの関係。
カイロプラクティックのアジャストメントで音が鳴ることがあるのは全く同じ原理です。メディアで取り上げられる時にいつもこの音が強調されます。しかしながら、施術の効果や質に”あの音”は全く関係ないということを声を大にしてお伝えしておきたいと思います。少なくとも僕はカイロプラクティックを学ぶ過程で音を強調しろと教えられた事は一度もありませんし、自分自身の臨床においても音が鳴るかどうかに重点を置いた事は一度もありません。音だけを頼りに矯正を行っているとすればそれは非常に危険です。
音が鳴らないと効いた気がしない
・・・という事を患者さんから要求されることがあります。しかしながら、カイロプラクティックの分析を飛ばして、どこが原因なのかも分からずにただむやみやたらに音を鳴らすだけでは、指の関節を鳴らしているのと同じで、それはケアとは呼べませんしただ危険なだけです。当オフィスではそのような事は行っておりませんので、あらかじめご了承下さい。
参考文献
1. Protopapas M, Cymet T, Protapapas M (1 May 2002). “Joint cracking and popping: understanding noises that accompany articular release.”. J Am Osteopath Assoc 102 (5): 283–7
2. Brodeur R. (1995). “The audible release associated with joint manipulation.”. J Manipulative Physiol Ther 18 (3): 155–64.
3. Unsworth A, Dowson D, Wright V. (1971). “‘Cracking joints’. A bioengineering study of cavitation in the metacarpophalangeal joint.”.Ann Rheum Dis 30 (4): 348–58.