首、背中、腰のどの部分ともつながりがある肩は脊柱に最も近く、カイロプラクティックと関係のある部位です。

首から出る神経が肩と腕を支配しているため、何らかの原因によって首からの神経の働きが低下してしまうとそれらの部位に症状が出る場合があります。椎間板ヘルニア、関節の退行変性、炎症、サブラクセーションなどがその例です。もしこのどれかが原因であれば、正しい分析の下でカイロプラクティックのケアを行い、症状を軽減させる助けをすることができます。

肩甲骨には肩の関節窩(腕の関節が入る部分)があります。肩甲骨は上部の肋骨に密着しているために、この部分の脊柱の分節の不正列やその他各種の問題が肩甲骨、ひいてはその周りの筋肉などに悪影響を及ぼすことがあります。背中のこの部分はサブラクセーションが起こりやすい場所ですが、カイロプラクターの得意分野でもあります。

意外に知られていませんが、肩は広背筋という背中の筋肉によって腰と繋がっています。広背筋は腕で何かを引っ張るときに最も働く筋肉です。腰が痛くなったり、上手く機能していないときは広背筋の機能にも影響し、さらには肩の動きの制限や痛みに繋がることもあります。これは逆に、肩の問題が体の機能のバランスにも影響すると言う意味ですので、今の問題が肩だけであっても、今後それが脊柱への問題に発展することも考えられます。

安定性と可動性のジレンマ

肩関節は球関節という関節に分類されます。人体の他の球関節は腕橈関節、中手指関節など、最も自由に動かすことの出来る関節の分類です。肩関節では、関節が作られるときの骨が入る溝が浅く、靱帯や筋肉などで保持されている為によく動きます。だから筋肉(主に回旋筋腱板:ローテーターカフとも言う。)や靱帯の状態が肩関節に及ぼす影響も大きくなります。

回旋筋腱板は次の4つの筋肉で構成されます。
①肩甲下筋
肩を内側に回す働き(内旋)のある一番強い筋肉です。殆どの場合、この筋肉の異常が原因で回旋筋腱板症候群になります。*1
②棘上筋
これは肩の上にある筋肉で、滑液包炎や腱炎などの問題と関係することが多いです。
③棘下筋+④小円筋
これらの筋肉は協働し、腕を外に回します。(外旋)また、肩が関節から外れるのを防ぐ役割もあります。

↑の筋肉は固定と運動という一見、相反する働きがあると言われています。この二つのことを同時に行うため、悪い姿勢や繰り返しの動作などによって肩の状態が万全ではない時には、より肩に負担がかかってしまいます。回旋筋腱板の異常から滑液包炎、腱炎、肩関節インピンジメントや末梢神経絞扼に発展するおそれもあります。*2

正しい姿勢が肩を守る

関節の位置が正しければ、ケガや故障のリスクを最小限に抑えられます。これは肩の関節も同じことです。肩の関節まわりの筋肉の強度が強いほど、脱臼するリスクも下がります。

インターネットを使用する人口は90年代前半に比べて爆発的に増加しました。コンピューターの前に悪い姿勢のまま長時間座ることも増えました。悪い姿勢で長時間座ると、胸の筋肉や首の前の筋肉を使い、背中の筋肉は伸びたままになってしまいます。*3

悪い姿勢でいると、首の筋肉や背中の筋肉を痛めるだけでなく、肩の位置も悪くなり、結果、肩の周りの筋肉にも影響がでます。筋肉のバランスが崩れた状態で肩を使い続けると、関節面に不必要な力が加わり、関節炎になりやすくなります。

肩が痛かったり、だるいなぁと思ったらご相談下さい。アジャストメントに加えて、背筋を効率よく強化するための簡単な筋力トレーニングと適切なストレッチの指導をにより、長期的で安定した回復へのお手伝いが出来るはずです。

参考文献
1. Leahy, Michael: Altered Biomechanics of the Shoulder and Subscapularis. Chiropractic Sports Medicine; Vol. 5, No. 3, 1991.
2. Leahy, Michael: Myofascial Release Technique and Mechanical Compromise of Peripheral Nerves of the Upper Extremity. Chiropracic Sports Medicine; Vol. 6, No. 4, 1992
3. US Census Bureau. Computer and Internet Use in the United States: October 2007. http://www.census.gov/population/www/socdemo/computer/2007.html