日々の仕事の中で起こる興味深い出来事が沢山あるのですが、今日はそのうちの一つ、おねしょとカイロプラクティックの関係についてご紹介したいと思います。
A君(小学校3年生の男の子)が先日オフィスに来られました。お母さんによると、A君は右足首のねんざ癖に悩まされているということでした。カイロプラクティックの分析後、骨盤部分への施術を行いました。数日後お母さんからお電話を頂き、先日オフィスで言わなかったけれど、実は息子のおねしょの回数が減ったと言われました。 カイロプラクティックケアがおねしょに有効なのではないかということは、大学に在学中から先輩方から聞かされていました。しかし、おねしょを治す為にカイロプラクティックの施術を行うわけではないので、私もそのお母さんには話していませんでした。
おねしょ(夜尿症)とは?
おねしょと夜尿症は厳密には違うものとして分類されています。幼年期の場合にはおねしょと言い、小学校入学以降に夜尿がある場合は夜尿症と呼ばれています。この記事では以降全て夜尿症とします。夜尿症の原因は諸説あります。ホルモンバランス、睡眠の質、心的ストレスに加えて遺伝的要因などがあるようです。両親のどちらかが夜尿症に悩んでいた場合、その子供はそうでない子供に対し、夜尿症に悩む確率が3〜4倍高いという研究結果もあります。
夜尿症の一般的な治療
現在の夜尿症の治療としては生活指導(水分量摂取や睡眠時間などへのアドバイス)、薬物治療(副作用あり)、アラーム療法(夜間にアラームをかけ、強制的に睡眠を中断してトイレに行く)などがあります。夜尿症の多くは自然治癒が期待されていますがあまりに長期にわたる場合はこれらの治療法を実践される方も少なくないようです。
膀胱の神経支配
膀胱のコントロールは脳、脊髄、仙骨神経叢2〜4、それに付随する末しょう神経で行われています。カイロプラクティックの施術が膀胱の働きに影響を与える可能性があるとすれば、脊髄の通っている脊柱と仙骨神経に近い仙骨へのアプローチが考えられます。そこで、2つのケーススタディーをご紹介します。
ケーススタディー①
夜尿の回数は週に3〜4回。夜尿症の子供は寝る前に水分を多く摂る等の生活習慣が問題であることが考えられるが、母親は特に夜尿が起こるきっかけのようなものは無いと主張。投薬とアラーム療法はとりあえず行わず、腹筋を鍛えることで夜尿症を治そうと2年間取り組んでいた。
男の子は週に1回くらいの頻度で頭痛があるが、頭部への大きな怪我などは無かった。神経学的検査では異常は全く見られなかった。子供が大きくなるにつれて夜尿症が与える精神的ストレスとお泊まり会などの社交的な機会が増えたので出来るだけ早く何とかしたいという両親の強い要望があった。
カイロプラクティックの分析後、頸椎5番、胸椎6番、胸椎12番、仙骨の2番に圧痛と浮腫が認められ、右仙腸関節の可動域の減少が見られた。男の子は週に1回のペースで8週間のカイロプラクティックケアを行った。最初の2週間は仙骨2番の矯正を行ったところ、1回目以降に夜尿の回数が週1回に減少した。3週目以降は頸椎5番の矯正も加わった。その後5ヶ月に渡って14回のケアを行い、5ヶ月後の夜尿の数は月に2回まで減少した。頭痛は3回目の施術で完全に消失した。
ケーススタディ②
先ほどの男の子Aのケアが始まって1ヶ月後、男の子のクラスメイトがケアを開始した。そのクラスメイトの男の子Bもやはり夜尿症に悩んでおり、その夏にあるお泊まり会までになんとかしたいと、男の子Aと一緒に腹筋トレーニングを実践していた。
男の子Aとは少し違って、男の子Bは難産のため出産時に外傷があり、幼児期の転倒が非常に多く、また4歳の時に木から落ちて大けがをしたという経緯があった。幼年期よりぜんそくとアレルギーがあり、抗炎症剤を常用していた。それに加え、多動性障害も示唆されていた。母親は抗炎症剤を使用しはじめたころから夜尿がひどくなり、男の子Bは疲れやすくなったと報告。前年にアラーム療法を8週間行ったところ、夜尿は1週間に一回まで減少したものの、アラーム療法を止めたとたんにもとに戻り、長期的な改善は見込めなかった。母親はアラーム療法の結果に満足していたが他にもっと良い方法があるのではないかと模索した結果、カイロプラクティックケアを選択した。
カイロプラクティックの分析後、上部と下部頸椎に可動域の減少が見られ、第2、3頸椎、第4胸椎、第2仙骨に圧痛と浮腫が認められた。 男の子Bは週一回のケアを9週間行った。最初の3回は仙骨2番の矯正を行い、2回目以降、夜尿が週に1回に減少したと母親からの報告があった。4週目以降は頸椎7番と胸椎4番への矯正も加えた。このケーススタディを発表した時点で、男の子Bの夜尿は2週に1回に減少、ぜんそくは40%改善し、多動性障害は診断不可のレベルにまで落ち着いた。
まとめ
夜尿症にカイロプラクティックのケアが有効であるという直接的な証拠は得られていませんが、投薬やストレスの高いアラーム療法に抵抗があるご両親の方には是非カイロプラクティックを試して頂きたいと思います。上の2つのケーススタディに共通することは、カイロプラクティックのケアは常に体全体をみているということです。全体を整え、その結果として部分的な問題にも効果を期待するというのがカイロプラクティックの素晴らしいところだと私は確信しています。