日本人のおおよそ90%が人生のうちに1度は腰痛を経験するといわれています。
遺伝によるもの、ライフスタイルによるもの、外傷によるもの、使いすぎによるもの、原因不明のもの等々様々な原因があります。
人間の体には自分で自分を治す力が備わっているので、ほとんどの人は腰痛を経験しても短期間で勝手に治ります。しかしながら、腰痛を1度経験した人のおおよそ75%は1年以内にまた腰痛になるという統計があります。
腰痛 → 痛いので休養する → 休んでいる間に筋肉と関節が弱る → 腰痛
というように、負のスパイラルにはまってしまうというのが大きな原因の一つです。
では、腰痛予防に必要なものはなんでしょうか?
JAMA International Medicine(米国医師会雑誌)で発表されたシドニー大学のGeorge Institute for Global Healthによるレビューでは、おおよそ6000ある腰痛予防に関する論文から、もっとも信頼できるものを23選び、それを精査した結果が発表されました。(23の論文に関わった被験者の合計は30000人)
そこで予防効果のあるものとして比較されたのが、
1、ライフスタイルについての教育
2、靴の中敷(インソール)
3、骨盤ベルト
4、エクササイズ
5、エクササイズ+腰痛予防の教育
でした。
この5項目の中から、1年以内の腰痛予防に効果のあったものを選定した結果は、
1、ライフスタイルについての教育 統計学上の効果なし
2、靴の中敷(インソール) 統計学上の効果なし
3、骨盤ベルト 統計学上の効果なし
4、エクササイズ 1年以内の腰痛再発が45%低下
5、エクササイズ+腰痛予防の教育 1年以内の腰痛再発が45%低下
となりました。このレビューでは特に1、2、3の項目に関しては”全く効果がない”としています。
もう一つ驚きなのは、”エクササイズのタイプはほとんど関係ない”という結果でした。30000人の被験者の中には、コアトレーニング、有酸素運動、バランストレーニング、筋力トレーニングなどばらつきがあり、その中でも特に秀でたエクササイズは統計上見つからなかったそうです。
このレビューを指揮したDr. Maherは「腰痛を予防するための方法としては、エクササイズだけが根拠がある」と締めくくっています。
骨盤ベルトの長期的な使用が腰痛に悪影響を与えることは今やほぼ常識ですが、根拠がない!と言い切るほどの結果とは驚きでした。
当オフィスの患者さんの経過を見ても、指導したエクササイズをちゃんとやる人とそうでない人では結果に大きな開きがあります。カイロプラクティックを受けても受けなくても、エクササイズをすることが非常に重要であることは間違いありませんね。
参考文献
Prevention of Low Back Pain: A Systematic Review and Meta-analysis
JAMA Intern Med. 2016 Jan 11:1-10. doi: 10.1001/jamainternmed.2015.7431.
Steffens, Maher, Pereira, Stevens, Oliveira, Chapple, Teixeira-Salmela, Hancock
Effects of an Exercise Program on Sick Leave Due to Back Pain
Physical Therapy April 1991 vol. 71 no. 4 283-291
Karin M Kellett, David A Kellett and Lena A Nordholm